自分が庭のプランニングを行うにあたり一番心掛けていることは、「快適な外部空間を提供する」ということです。お庭を外部の部屋ととらえ、機能面を充実させ、デザイン(景観)とバランスを配慮したプランニングを行っています。
プランニングの際に、お客様からいろいろな要望を伺うのですが、漠然としたイメージはあってもどうしたら良いかわからないというお客様がほとんどです。しかし、その「漠然としたイメージ」を伝えてくれるだけで十分プランニングを行うことができるのです。イメージがわかない方でも、打ち合わせの中から要素を見つけだしてプランニングを行いますのでご安心ください。
お客様によって要望は様々です。それらに自分の考えで、こうしたらもっと良くなるという+αの要素をくわえた「お客様のお庭」をプラン致します。「快適な外部空間」を提供するために、どのような事を考えてプランニングを行っているか、自分のプランニングに対する思いや要点について述べていきます。

お客様の要望をもとに、まずゾーニング(配置計画)を行うのですが、これが最も重要で難しい部分であります。ゾーニングの要素として、庭のスタイル(オープン・クローズ・セミオープン)による塀等遮蔽物の形状・車の駐車スペースや人の動線となるアプローチ・人が集まったり、趣味として利用する憩いのスペース・物干しや物置きを置く普段の生活で利用するスペース・フォーカルポイント(ポイントとなる景色)の選定などがあります。
ゾーニングの際は、各要素の形状・繋がり・動線などを考慮して行いますが、自分の場合特に「アプローチをこういう形状で配置したら残りのスペースの形状がこうなる。」というように、アプローチそのものの形状も重要ですが、残りのスペースの形状を意識し大事にするようにします。それは、各要素をそれぞれを配置した際に、デッドスペース(無駄)のないゾーニングが行えるからです、そして、それが機能面とバランスを考慮したお庭となるのです。また、事前に敷地の形状や建物の配置、道路との取り合い、埋設物等の位置を調査し、それらとの関係も十分に配慮しなければなりません。
プランニングは、ゾーニングで決まるといってもよいでしょう。それくらい重要な事です。だから、自分はこのゾーニングに一番時間を掛けますし、こだわる部分でもあります。自分なりに工夫を凝らし、住み手の立場に立って、まず何を優先しどうする事が一番快適になるか考えたゾーニングは、自信を持ってお勧めできる「お客様だけのお庭」のプランに繋がっていくと思っております。

デザインに関しては、施主さんの好みを考慮し、建物や周辺の街並みと調和したデザインスタイルを選定します。デザインスタイルのキーワードとして、例えば南欧風(プロバンス)なら曲線・コートタジュール・リゾートパティオ、英国風なら自然風景色・コテージガーデン・ボーダーガーデン、スパニッシュなら白・石の外壁・回廊、アメリカンならカントリー・三角屋根・コロニアル様式、シンプルモダンなら直線・モノトーン・シャープといった様に、各スタイルのキーワードから連想されるイメージをしっかりと掴み、デザインに反映するようにしています。デザインスタイルによって、ある程度使用する素材や商材などのデザインアイテムは決まってくるので、それらをうまくデザインに組み込むように心掛けております。

庭を構成する素材の中で、欠かすことができない物が樹木や草花の存在です。日本には四季があるため、樹木の生育には大変適した風土といえます。そして、これらが醸し出す雰囲気はとても素晴らしく、その効果は大変大きいといえます。
例えば、四季の変化を感じさせる樹木・朝露に濡れた樹木・構造物や添景物の存在を和らげる樹木・ライトアップされた樹木・木陰を設けたり、目隠しの為の樹木・街並みの景観のイメージアップに役立つ樹木。このように、庭に樹木があると機能的にもデザイン的にも様々な演出をすることができますので、庭創りには欠かすことのできない素材です。
お客様の中に、「今までは樹木や草花に関して興味がなかったけど、自分の庭にあると感心を持つ様になりました。」とおっしゃる方がおります。樹木を植えたことによって、心が癒されるようになったのか、家族とのコミュニケーションを図るために役立ったのか…いずれにしても樹木が存在する事によって効果があったと思います。また、生き物ですから年間を通じてそれなりに管理が発生いたしますが、たまには童心にかえったつもりで土にまみれて作業する事も気分転換になりますし、明日への活力にもつながると思います。
そんなわけで、自分は「樹木のある庭」を心掛けてプランニングしております。

以上、簡単に自分がプランニングする際のこだわりを簡単に述べてまいりました。いままで御依頼のあった物件には同じ物というものは存在しません。敷地の形状から建物の様式、お客様の要望等を考慮すると、全てが違うプランニングとなります。が全ての物件に対して、自分の熱い思いというもは変わりません。自分なりにこだわりを持って、「お客様だけのお庭」を意識してプランニングさせていただいているつもりです。あくまで庭職人の主人公はお客様自身です。これから庭創りを計画されている方に、少しでもご協力させていただくことができればと思っております。

望野 徹(もちの とおる)
日本大学 理工学部 土木工学科卒
一級土木施工管理技士
一級造園施工管理技士
一級エクステリアプランナー